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チョコレートで地域活性化を 沖縄やんばるでカカオ初収穫

文・飯島千代子

沖縄北部の「やんばる」と呼ばれる地域・国頭郡(くにがみぐん)大宜味村(おおぎみそん)にある、沖縄の食材を使ったビーン・トゥー・バーのチョコレートショップ「OKINAWA CACAO」が、1月下旬にカカオを初収穫しました。沖縄でのカカオ栽培について、チョコレートを軸にして地元の活性化を図る取り組みをうかがいました。

ベトナム系のトリニタリオ種

 「OKINAWA CACAO」は、2016年に沖縄・大宜味村でカカオの栽培の取り組みを始めました。

 「日本の各地域で過疎化が進んでいます。どうやったら次の世代に引き継いでいける産業ができるのかを考えた結果、沖縄でカカオ栽培に至りました」

 代表取締役の川合径さんはパティシエでもなく、チョコレート業界にいたわけでもありません。東日本大震災後の復興支援などに携わり、地域が疲弊していく現状を目の当たりにし、ちょうどその頃行き来をしていた沖縄を見て、自身で起業をする決意をしたそうです。

やんばるを選んだ理由は、沖縄でカカオをやりたいという思いを受け入れてくれたのがこの地の人たちだったこと。沖縄は亜熱帯気候ですが、島北部にある大宜味村はカカオの栽培に適したカカオベルト(赤道を挟んで北緯20度~南緯20度)より北に位置します。カオの栽培適地ではありませんが、露地栽培にこだわらなければ、やり方次第でできると考えたからです。その手法が、ビニールハウスによる栽培で、無加温で行っています。

2016年に播種したのはベトナム系、中米系、台湾系など、さらに17年にフィリピン系も追加。いずれもトリニタリオ種です。この品種は希少性の高いクリオロ種とカカオ豆の生産量の8~9割を占めるフォラステロ種を交配したものです。今回、1月29日に初収穫となった木はベトナム系で、今後は他の産地の木からも収穫が見込まれています。

初収穫となったカカオの実
川合径さん(左)とスタッフ

1年後に商品化を目指す

 収穫後のカカオは発酵、乾燥や焙煎などの作業がありますが、これはある程度の量がまとまったら行うとのこと。カカオの風味を決めると言われている発酵については、どのような手法を取るかは決めていないそうです。

 「今回は成功事例のなかった沖縄で、少量ながらもカカオが収穫できたという事実が大切。カカオの実を割って口に含んで、香りをかいで、普通に育ったなあという思いでした」。 栽培適地ではない沖縄で栽培しているため、成長の早いもの、収穫できたものが適した品種になります。順調にいけばカカオの木は、おおよそ半年ごとに収穫ができるので、年間50~100キロ収穫でき、1年後の製品化を目指します。

スタッフとカカオ栽培のビニールハウスにて

地元の食材とコラボレーション

 「カカオ豆は砂糖や食材と合わせることができ、地域を表現できる農産物だと思います。カカオを中心に生産者も広がって、一緒に盛り上がっていきたいですね」

 現在の商品は、シークヮーサーやカラキというオキナワニッケイ(シナモン)、月桃というショウガ科の植物、泡盛など大宜味村の食材を用いたもので、カカオ豆はガーナ産が中心。当初は東京のビーン・トゥー・バーなどに製造委託をしていましたが、その後は自社で製造開始。レシピなどもオリジナルで作っています。 「カカオ豆はスタンダードで日本人にも馴染のある味がいいと思ったことと、使う素材がガーナ産の豆と合うものが多かったので」。素材によっては、別の産地の豆を使うこともあるそうです。

名護市でも栽培

 20年9月、名護市で新たなカカオ栽培の試みも始まりました。GPSSグループと共同のソーラーシェアリングという太陽光発電を利用したビニールハウス栽培です。こちらもベトナム系の木を多く植えています。持続可能なカカオ栽培を目指し、耕作放棄地の有効活用として取り組んでいるそうです。

 日本人のチョコレート熱は高まるばかり。今やビーン・トゥー・バーのチョコレートは大人気です。しかし「OKINAWA CACAO」の取り組みは、豆も自ら日本で栽培という、究極のビーン・トゥー・バーなのです。今後の商品化が楽しみです。

商品の一部から。「カラキ」はやんばるに自生するシナモンの一種で、口に含むとじんわりシナモンの風味や苦味が心地いい。「シークゥワーサー」は余韻に柑橘類の酸味が続く。「月桃」は複雑味やカカオの由来の苦味が重なった味わい。泡盛にカカオを漬け込んだ「まるた」は、芳醇な香りとカカオの風味が華やかな印象。