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ニコラ・ジョリー来日

ニコラ・ジョリー来日

ビオディナミについて熱く語る

ワイン造りにおける

「ビオディナミの伝道師」ニコラ・ジョリー氏が来日。

ワイン造りにおける自然界とのかかわりなどを語ってくれました。

文・飯島千代子

 ニコラはロワールの複数の畑を所有していますが、とりわけ有名な畑が単独所有する「クレ・ド・セラン」です。これはロワールのモンラッシェとも称されています。

ニコラはもともとニューヨークなどでビジネスマンとして働いていましたが、キャリアを捨て、実家のワイナリーに戻りました。

1980年からビオディナミを導入し、84年からすべての畑で実践しています。

 ビオディナミとはオーストリアの学者ルドルフ・シュタイナーの思想に基づく有機農法の一種。天体、特に月の運行をベースにした暦に従って農作業を行うものです。 化学肥料や農薬などは一切使用せず、ハーブ類や牛の角などを用いて、大地の力を引き出そうという考え方です。 彼が率いる「Renaissance des Appellations(ルネッサンス・デ・アペラシオン)」には約170生産者が加盟しています。

 セミナーに現れたニコラは細身で大学教授のような印象です。 除草剤を使っていると、ブドウは土から栄養分を得られません。そこで必要となるのが化学肥料。しかしながらブドウは水分と一緒に化学肥料を吸収すると、今度は病気をよんでしまうので、硫黄などを添加する必要があるといいます。

「テクノロジーを駆使すればいいワインはできます。しかしそれは本来の目的ではありません」

アペラシオン(原産地)の考えと同じで、土地の個性を引き出す、すなわちブドウらしさを引き出すことが大切で、その方法がビオディナミだと語ります。

「ブドウの根がしっかりはり光合成を受けると、まるで薬の効果があるような植物となります」

ブドウ自身の力を引き出せば、化学肥料もいらない立派な実を結び、

それはまた醸造過程での仕事を減らすことにつながります。

「ブドウ自身についている自生酵母を使うこと。そうでないと、それぞれの土地を表現したことになりません。自生酵母を殺すような酵母を使ってはいけません」

「クローンを排除します。1本の木から何億ものクローンが生まれ、世界中のブドウ畑は95パーセントのクローンから生まれています。クローンは開花の時期、収穫の時期も同じ、これは正しくありません」

 自身の収穫については、80年代は早摘みでしたが、ここ10年、15年収穫を遅くし、さらに10パーセントは過熟ブドウを使うようにしていることなど、ビオディナミに移行してからの変化についても述べていました。

「地球の温暖化、気候変動、CO2の増大といわれていていますが、それよりも問題なのは何億という波長。いろいろな電波や波長が我々を痛めつけているのです。ビオディナミで小さいかもしれないが、地球破壊を防ぐことができるのです」

 とニコラは語ります。

 その理由については、1つ1つのプレパレーション(調合剤)が天体からのエネルギーを受け取るからということ、ビオディナミは馬が耕作するなど動物と共生もしており、こうした動物も花、草、火など自然界の多様なエネルギーと関係していること。 いろいろいろな力が作用していて、動物とワイン、まるで別個のもののようですが、天体のエネルギーを結び付けているということなど、正直なところ、こうした内容は難しかったです。

 ニコラは「ビオデディナミの伝道師」らしく、真摯に解説し、ビオディナミでワインを造れば、40年前、50年前の味がするはずだと語っていました。 昔の人が普通にやっていた土壌が疲弊しないような取り組み、土地の特徴を引き出すことは、ワイン造りだけでなく、野菜やチーズ造りなど現代の農作物全般にいえることだと思います。

今回、「ルネッサンス・デ・アペラシオン」の加盟生産者のうち約70社が来日し、フランス大使館でワイン業界向けの試飲会を開催しました。

ニコラの『クレ・ド・セラン』の豊かな果実味と力強さを味わうとビオディナミとはこういう風味なのかと思います。

この他にもフランス各地をはじめイタリア、スペイン、オーストラリアやニュージーランドなどの生産者が出展。

ビオディナミをはじめとするナチュラル志向の生産者の試飲ができる希少な試飲会でした。