フランス大使館貿易投資庁-ビジネスフランスはフランスの高級食材に特化したイベントを開催。現地から担当者が来日したり、オンラインで自社製品をアピールするなど日本市場に対する期待の大きさがうかがえました。 text by Chiyoko Iijima

ノルマンディーのオーガニックシードルとフルーツジュース
「ル・コック・トケ」はノルマンディー出身のオーナーの二人が故郷で果樹園を取得し、100%オーガニックのフルーツジュースブランド立ち上げました。果樹園では40種類以上のリンゴとナシの木が栽培されています。
現在フレーバーフルーツジュース、ノルマンディー産シードル、有機リンゴベースのスパークリングなどを販売しています。
今回試飲した『シードル・ブリュット・パトロン』は苦味、ほろ苦さ、甘味のある3種類のリンゴを使用しています。甘さ控えめでほろ苦く深みのある味がノルマンディーのシードルの特徴といいます。こうした伝統の味わいの他にもシトラス風味のベルガモットシードルなどオリジナルな製品もあります。
スパークリングシリーズ「ギャンゲット」は3種のフレーバーで新発売となりました。これは有機リンゴをベースにしたフルーティーな味わいのノンアルコールのスパークリングです。
また5種のフレーバージュースやネクターも日本初上陸となりました。こうした商品を見ても昨今のモクテルやカクテル人気がうかがえます。


モダンなスパークリングミード(ハチミツ酒)
日本ではまだあまり知られていないミード。ミードはハチミツと水を使った醸造酒で人類最古の酒と言われています。ドライから甘口の味わい、さらにスパークリングタイプもあります。
「ブル・ド・リュッシュ」はミードの可能性に魅せられたオーナーが2020年に立ち上げた会社です。原料のハチミツは単花蜜を用い、香りの個性を引き出すようにしています。
ハチミツの繊細な特徴を守るため選び抜いた酵母を用い、ステンレスタンクでゆっくり低温発酵させた後ガスを添加し低温殺菌するといったことなど、さまざまな工夫をしています。
この日はソムリエでワインディレクターの田邉公一さんを迎えて3種類のミードのテイスティングを行いました。
「ハチミツがどこで採られたかで香りが違ってきます。これはワイン造りにおけるブドウにも共通しています」と語る田邉さん。
フランス王家が所有していた森の菩提樹のハチミツを使用したのが『ブル・ド・リュッシュ(菩提樹)』。
「これはとても爽やかでグレープフルーツや柑橘類の印象。お勧めはサーモンマリネやカプレーゼなどトマトを使ったものです」
プロヴァンス産ラベンターを使った『ブル・ド・リュッシュ(ラベンダー)』はラベンダーの香りとコクが特徴。プロヴァンスの栗の葉で包んだバノンチーズやシェーヴル、パクチーを使ったアジアンフードがお勧めとのこと。
「『ブル・ド・リュッシュ(ライチ)』はマダガスカル産ライチを使っており、マスカットのニュアンスをもった芳醇な甘みが心地いいです。テリーヌやデザートに合わせたいですね」と3つの印象について語ってくれました。
ノンアルコールの『スパークリングハニーウォーター』はモン・サン・ミッシェル産のハチミツの風味とシチリア産の有機レモンの清涼感がバランスよく楽しめます。
「レモンスライスを添えてカクテル風に提供するのもいいでしょう」と田邉さん。日々の食卓やパーティーのヒントになりそうです。


レ島産のフルール・ド・セル(塩の花)、AOPバターなど素材にこだわったショコラ
「イル・ド・レ・ショコラ」は大西洋の港町ラ・ロシェルと橋でつながるレ島にあります。オーナーは父から受け継いだ2代目のエリック・ヴァレジャスさんで、今回はオンラインで参加しました。
同店はレ島の名産「フルール・ド・セル(塩の花)」やポワトゥー=シャラント地域のAOPバターといった地元の素材を生かした商品が特徴です。実はフランス国内でもレ島のフルール・ド・セルは生産量が少なく幻の産地と言われているそうです。また別名「白い金」とも称されています。
同店が使うカカオはカメルーン産で現地の農園とは長くパートナーシップを結んでいるそうです。
今回試食したなかにはエリックさんの父が創業時に考案したというレシピのものも。カメルーン産のビターチョコレートとフルール・ド・セルの組み合わせが特徴的でパンチのある味わいでした。

AOCコタンタンのパイオニアのシードル
「メゾン・エルー」はノルマンディー、コタンタン半島のオヴェールにて1946年よりオーガニックのシードルとカルヴァドスを生産しています。2代目の女性醸造家のマリー・アニエス・エルーさんはAOCコタンタン認可の立役者で、2016年にAOCコタンタンが認定されました。
AOCコタンタンでは28の在来品種のリンゴを認めており。そのうち60%以上を使用することが定められています。
メゾン・エルーでは10ヘクタールの果樹園があります。
在来品種の中でも苦味のあるタイプ、ほろ苦いタイプを中心に栽培し、甘みのあるタイプや酸味のあるタイプも栽培していています。
またAOCコタンタンでは果樹園1ヘクタール当たり、200メートルの生垣があることも規定されています。
これは強風から果樹園を守る防風林の役目を果たしているのです。
AOCコタンタンの特徴は古来製法にあります。
そのキャッチフレーズが「低温殺菌なし、炭酸ガス充填なし、酵母添加なし」。
これに加えてメゾン・エルーは瓶内三次発酵をしている点にも特徴があります。
こうして造られたAOCコタンタンは次の2アイテムです。
『メゾン・エルー キュヴェ・トラディション ブリュット2018』は同社のスタンダードタイプ。リンゴの果実感やコク、心地いい酸味が楽しめます。
『メゾン・エルー グランド・キュヴェ エクストラブリュット2018』は極辛口。フルボディの味わいでタンニンの渋みも感じられます。
どちらもビオであり、しっかり発酵させリンゴの個性を引き出しています。
この他、カルヴァドスのオーク樽で発酵させたり、シャンパーニュのように澱引きした限定生産のキュヴェもあり、シードルの多彩な風味を楽しむことができます。

グラン・クリュ基準で栽培されたオーガニックブドウを使ったジュース
「メゾン・グベ」はボルドーのグラン・クリュ基準で有機栽培されたブドウを用いたブドウジュースをつくっています。ブドウ果汁には添加物を加えたり、また加糖をしたりしません。ボルドーの伝統品種メルロー、カベルネ、セミヨンを用いたスティルとスパークリングのジュースがあります。
『メゾン・グベ オーガニック グレープジュース(メルロー)』は赤い果実味に加えてやや甘さを感じるチャーミングな味わいです。『メゾン・グベ オーガニック グレープジュース(カベルネ)』はしっかりとした酸味が特徴です。『メゾン・グベ オーガニック スパークリング グレープジュース(セミヨン)』は果実のコクのなかに酸味も感じられます。
ここ数年、ノンアルコールが注目を集めていますが、これも食事に合わせられるドリンクとして重宝されそうです。
今回は13社、15アイテムが披露されましたが、とりわけ伝統に新しい解釈を加えた製品が印象に残りました。