ボルドーの甘口ワインと和食の相性
銀座のフランス料理レストラン「ロオジエ」のソムリエ・井黒卓氏をナビゲーターに迎えた「ボルドーの甘口ワインと和食のマリアージュ」セミナーをリポートします。
(主催:フランス大使館貿易投資庁-ビジネスフランス)
文・飯島千代子

やや甘口と極甘口
ボルドーの甘口ワインといえばソーテルヌやバルサック地区を思い浮かべる人も多いことでしょう。
実はボルドーには、他にも魅力的な甘口ワインを生産する産地があります。
今回、8つのAOP(原産地保護呼称)から生産者が来日しました。
これらの土地に共通するのはボルドーのガロンヌ川沿いに位置すること。この流域は秋になると朝霧が立ち込め、午後は気温が上がり、このおかげで午後にボトリティス・シネリア菌(貴腐菌)が活発になりブドウに繁殖します。
この菌の働きによってブドウの糖度が凝縮し、凝縮が高まるほど複雑なアロマとなります。ブドウ品種はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルです。
その甘口の造りは収穫したブドウの状態によって「やや甘口」(モワルー)、「極甘口」(リクルー)に分けられます。
やや甘口は、完熟またはわずかに過熟したブドウを優先して収穫します。
一方、極甘口は過熟して貴腐菌が付いたものを収穫します。
この菌は均一には繁殖しないので、同じ畑の中であっても十分に菌が付着した粒だけを選び手摘みするので、複数回収穫することになります。
収穫は9月末から11月半ばが一般的です。
甘口ワインと和食との相性を探る
今回は6つの異なる原産地の甘口ワインと和食とのマリアージュセミナーに出席しました。ナビゲーターは銀座のフランス料理レストラン「ロオジエ」のソムリエ、井黒卓氏です。 料理は会場となった「東京ステーションホテル」が創作しました。
「似通った同調する味わい、相反する味わいをコース料理のペアリングで入れるようにしています。
味とは甘味、酸味、苦味などの五味のほか、爽やかなもの、脂質のあるオイリーなものも入ります。
甘口は爽やかなものも油脂分の高いものも、どちらの風味にも合います。
また、氷を入れてソーダやスパークリングワインやシャンパーニュとアレンジするのもお勧めです」と井黒氏は甘口ワインが合う料理の方向性や食前酒しての提案を語りました。
1品目は『柚子豆腐、クリムチーズ、東京べったら漬け(山葵風味)』と『シャトー・ロレット2016年』(極甘口/AOPサント・クロワ・デュ・モン)。
「クリームチーズのまろやかさ、山葵との余韻にもマッチします」(井黒氏)
2品目は『びんちょう鮪のアイエソースかけ、林檎のガリ添え』と『シャトー・ドゥ・マルサン2013年』(やや甘口/AOPプルミエ・コート・ド・ボルドー)
「貴腐菌がほとんど付いていないブドウを使った、フレッシュのやや甘口とマグロが合います。極甘口よりも、こういうやや甘口タイプはフレッシュな魚介類と相性がいいと思います」(井黒氏)

3品目は『帆立貝と蒸し無花果、胡麻味噌だれ』と『シャトー・レ・トゥレル2015年』(極甘口/AOPカディヤック)。 「1本目が柑橘類、2本目がシトラス、3本目のこれはマンゴーの風味で香りも甘さも重めです。味噌の香ばしさには、しっかり濃厚な甘口の方が合います」(井黒氏)
4品目は『地鶏胸肉焼と雲丹醤油風味』と『シャトー・シガラ・ラボー・No.5 2017年』(やや甘口/AOPボルドー・モワルー)
「このワインは酸化防止剤の亜流酸を使っていません。
残糖度が低く心地よい苦味があります。アンズやキンモクセイの香り。
ミョウバンを使ったウニはワインと合わせると生臭くなりがちですが、その点、亜流酸を使用していないこのワインは、今回の中で一番ウニに合っていました」(井黒氏)

5品目は『フランス産セップ茸と湯葉のグラタン』と『シャトー・ユラダン2015年』(極甘口/AOPセロンス)
「キノコの香り、煎ったアーモンドの風味がして、これはセロンスの石灰質土壌からくるもの。湯葉にセップ茸を使っているので、とても合います」(井黒氏)
6品目は『白もろこし寄せ、はちみつ風味の干し柿添え』と『シャトー・ルーピアック・ゴティエ2017年』(極甘口/AOPルーピアック)
「甘味、酸味、苦味が溶け込んでいる印象。爽やかな酸味もありフルーツ、アンポ柿と抜群のペアリングです」(井黒氏)
今回のセミナーを通して、甘口ワインは和食の味付けでお互い引き立て合うものがあり、ペアリングで提案すると、新たな発見があるのではと思いました。
