ドイツのピノ・ノワールの実力とは?
ドイツワインといえば白。
とりわけリースリングが有名ですが、
近年ではシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が注目されています。
今回はナビゲーターにワインライターでジャーナリスト葉山考太郎氏を迎え
ピノ・ノワールのミニ試飲会のお話を紹介します。 (主催:Wines of Germany 日本オフィス)
文・飯島千代子

ライター、ジャーナリスト。ワイン専門誌に記事を書く。「シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ章」受章。主な著書に『ワイン通』『シャンパンの教え』、訳書に『ラルースワイン通のABC』『パリスの審判』(以上いずれも日経BP社)など。
ドイツとえいば白を思い浮かべる人も多いことでしょう。
その中でも圧倒的なのがリースリング。世界のリースリング栽培面積のおよそ60パーセントを占めているといいます。
そんな白のイメージが強いドイツで、いま、世界的に注目されているのがシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)です。実はドイツの赤ワイン品種はピノ・ノワールの栽培面積が一番広く、しかもその栽培面積はフランス、アメリカに次ぐ世界第3位となっています。
「1970年代の日本では、ドイツワインといえばモーゼルの白が有名でしたね。
“ゴルゴ13”も美女とグラスで楽しんでいましたよ」とやや年代がわかる話題をふる葉山氏。
また昔は甘いイメージのドイツワインでしたが、今、若い世代の造り手たちは、辛口にシフトしたワインを生産しています。
「カベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種は割とどこでもうまく育ちます。
それらに比べるとピノ・ノワールははるかに難しいのです。
近年ではニュージーランド、オレゴンのピノ・ノワールが有名になり価格も上がっているものもあります。
それに比べるとドイツのピノ・ノワールは、コストパフォーマンスが高く、お買い得ではないでしょうか。
ドイツのピノ・ノワールは例えるならば、高校生の岩下志麻」と将来性が高いという意味を葉山式に表現していました。
今回試飲したラインヘッセンの『ワイングート・フレイ2016年』は、きれいな酸味とやわらかなタンニンが印象的。ちなみにラインヘッセンはドイツで一番ワイン生産量が多い地方です。
ドイツで最も赤ワイン生産率が高いのがアール地方。同地産の『マイヤー・ネーケル2016年』は、ぐっとエレガントさが増した味わいです。
「カツオの出汁のような旨味、ヴァニラの香りが感じられます。
美しい色合いには、ルビーの香りという表現も。
まさに大女優の可能性を秘めた高校生の岩下志麻!」と葉山氏。
バーデン地方はドイツで一番南部に位置し、ドイツでは温暖な産地。
フランスのアルザス地方に隣接しています。よってここもリースリングやピノ・ノワールに適したテロワールです。
『ベレハント・フーバー・マルターディンガー2015年』はピュアな酸味と果実味、しっかりした骨格のある味わい。
かつて当主のフーバー氏が、マルターディンガー村はピノ・ノワールの一大産地であったことを古文書から知り、生まれたワインです。
「まさにブルゴーニュのグラン・ヴァンを彷彿させる造り。熟成させて10年後に飲みたい」と葉山氏も将来性を評価していました。
最後にこの日は赤のレンベルガー品種『ブルグ・ラベスブルグ2012年』も試飲。
野性的な香りが特徴でした。
今回、ピノ・ノワールを中心に試飲をしましたが、
「ブラインドでブルゴーニュとドイツのピノ・ノワール対決をしたら面白いのでは」 と葉山氏が語るように、価格とのコストパフォーマンスの良さが広まるといいと思う会でした。
ちなみに2011年に20種類のドイツのピノ・ノワールと20種類の他国のピノ・ノワールの地域名を伏せた対決がロンドンで開催されました。審査員はイギリス人12名。 結果はトップ10のうち7本がドイツワインでした。
また2013年も同様に地域名を伏せて、20種類のドイツのピノ・ノワールと他国の20種類のピノ・ノワール対決が香港でありました。審査員は中国、日本、シンガポールの19名。
結果はトップ10のうち、8本がドイツワインでした。
このような結果を、ワインバーやビストロなどのグラス売りのアイディアとして利用するのも面白いかもしれません。
