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連載⑤ リストランテ ヒロソフィー 銀座/山田宏巳シェフ

「スッポンのたまごを使ったリゾットカルボナーラ」

 

 

「銀座ヒロソフィー」はカリスマ的な人気を誇る山田宏巳シェフが「自らお客様をもてなす店」として2009年にオープンしました。特等席はカウンター。目の前でシェフが作る料理をウイットに富んだ会話とともに味わえる魅力的な空間になっています。「以前より自由な表現ができるようになった」と山田シェフは語ります。お客さまと最高の料理を楽しみたくて世界中を飛び回るシェフに「ニッポンの味」をうかがいました。

 

 

おもしろいでしょ? ローマの名物パスタ、カルボナーラをリゾットで作りました。カルボナーラといえば、卵とパルミジャーノチーズ、そして黒こしょうが不可欠だけど、このリゾットには卵は卵でもスッポンの卵を使っています。リゾットの上にのっている「黄色く大きなイクラ」みたいなものがそれです。ひと粒ひと粒、口の中でつぶしながら完成させるカルボナーラなんですよ。

1年くらい前、浜名湖でスッポンの養殖をしている生産者さんと知り合って、そのときに初めてこの卵を食べさせてもらいました。とても濃厚でびっくり。クリームやチーズに合うと思いましたね。だから、僕が大好きなカルボナーラにも使いたい、そう思ったんです。カルボナーラにはこれまでいろいろな卵を使ったけれど、チーズと合わせるのだからやっぱり味の濃い卵がいい。となると、スッポンの卵は抜群に相性がよかったわけです。プチプチっとする食感もいいし、なにしろお客さんに出した時に驚く表情が楽しい(笑)。

いつもはパスタで作るんだけど、今回はニッポンの味がテーマなので、主食であるお米を使ったリゾットにしました。このリゾットに使ったお米は、いわゆるごはん用のお米ではなく、新潟の「越淡麗(こしたんれい)」という酒米です。実は日本の酒米はイタリアのお米によく似ているんですよ。

新潟の蔵元とは長くお付き合いしています。実は僕、もともとは日本酒があまり得意ではなかったのですが、酒蔵に初めて行って絞りたての日本酒を飲ませてもらったらとてもおいしかった。  以来、料理に合わせて飲むのはもちろん、料理に使う機会も増えていきました。ある日、日本酒を使っていたときにふと「この日本酒も米からできているんだな」と思った。ならば、原料である酒米はどんな味なんだろう、と思ったわけです。すぐに蔵元に連絡をして酒米を送ってもらうようにお願いしました。蔵元の方は、酒米はそのまま食べられるものではないですよ、と笑っていましたけどね(笑)。でも送ってくれた酒米でリゾットを作ったら、案の定、びっくりするほどおいしくできました。余計な粘り気がなく、イタリアのリゾット米のようでそれより力がある。その場にいた全員が驚いていたのを今でも覚えています。

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ちょっと昔の話をしますが、80年代頃ですかね。当時は僕もまだ若いし、イタリア料理なんて誰も何も知らない時代だったから、「本場に追いつけ追い越せ」と、イタリアの食材やレシピを必死で追いかけていました。実際、イタリアで食べられているそのままの料理を作ることがイタリア料理界全体のスタンダードでしたからね。

いまではポピュラーなバジリコなんてものものない。だから、イタリアのハーブや野菜を育てて欲しいと、千葉の農園にお願いに行ったこともありました。料理人が畑に行くのは珍しかったから、雑誌の取材も千葉まで同行してきたこともあります。え? 山田といえばトマトだって(笑)。それは正しいね。高知で出会ったトマトと生産者には感動して、そのときのインスピレーションで「トマトの冷たいカッペリーニ」が生まれたといっても過言ではない。そして、だんだん、イタリアを追いかけることももちろん大事で大切にしたいけれど、僕はもっとこう、現場に寄り添っていたいと思っていきました。以降も、何度も何度も畑に通いました。当時はインターネットなんてないから、自分の足でいい食材を探していました。実際にいろいろな場所を訪ね、その土地を見て感じて、そこでおいしいものを食べる。そうやって少しずつ自分の足で集めた情報が今の財産ですよ。そして気がつけば、もう45年経っちゃった(笑)。でもまだまだ、日本にはおもしろい食材がたくさんあると思います。僕はイタリア料理を尊敬しているし、イタリア料理人だからイタリア料理の基本をベースにするけれど、日本の食材を使った、日本人の僕にしかできないイタリア料理を、これからも突き詰めていきたいと思っています。

 

「スッポンのたまごを使ったリゾットカルボナーラ」レシピ

 

 

山田宏巳シェフ/ プロフィール

1953年東京都出身。16歳でイタリア料理の道に入り27歳でイタリアへ渡る。1年半の修業後帰国。都内で数店舗の料理長を経て1995年「リストランテ・ヒロ」をオープン。2000年の沖縄サミットでイタリア首相の専属料理人を務め、2009年にはサンセバスチャンガストロノミー代表の一人として参加。2009年ヒロソフィー銀座をオープン。

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リストランテ ヒロソフィー 銀座

〒104-0061東京都中央区銀座6-8-7交詢ビル4F
TEL:03-5537-5855
営業時間 火 18:00~21:00LO
     水~土 12:00~14:00LO/18:00~21:00LO
     日 12:00~15:00LO
月曜定休

 

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